空気の感覚

久々に院生時代の先輩に呼び出され、思い出話や近況などを取り留めなく話す。

 

帰り際、駅の近くの路面店を覗いたりしてウロウロしていたのだけれど、とんでもないことに気がついてしまった。

 

というのもこの感覚、隣にいる、しかし存在を感じさせない空気みたいな「感覚」が、前にもあったことが、急に追体験のように蘇ってきてしまったのだ。

 

あまりに自然にリプレイが始まったので、しばらくそれに気がつかず、ちょっとしてから互いにギョッとして距離を置いたのである。

 

知り合ったころ、先輩はさまざまな事情で長い休学から明けたばかりだった。別の先輩たちと馬鹿な話を繰り広げた飲み会の帰り道、赤信号になって取り残されてしまった10歳下のわたしの前で、初対面の先輩は涙を流していた。あとになってから知った事情は、とんでもなく耐え難いものであったので、いずれにしよ流した涙だとは思うけれども、そんな風にして芽生えた友情関係は、やはりどこか歪のまま、連絡したり長期にわたりなんの連絡もしなかったりして、今日にいたる。

 

先輩はとっても好青年であるけれども、この他人のブログに勝手にイケメンの話を更新し続けるわたしとはいえ、これまでも、これからも、他人のような知人関係を続けていくのだろう。

 

それが見え透いているので、一瞬でも、よくふたりで大学の前の通りを花を見上げたり馬鹿話をしながら歩いたあの感覚が蘇ってきたのは、非常に恐ろしいことであった。